組織をいくつか渡り歩いているからか知らないが、どうも業務システムの更新ってな局面にぶつかることが多い。すっごいふるーくて、化石のようなシステムがまだ現役で動いていて、そろそろ流石にやべぇんじゃねーの的な話が降り積もって、ようやくやっと重い腰が上がろうとするときに、ひっそりと組織の片隅にわたしがいたりするのである。たまには、ああ、なんかシステムのことをわかっていそうな奴がおるぞ、ってなことでひっぱり出されることもある。そして、いつも同じような問題に悩まされることとなる。
「古いシステムと同様の機能を満たすこと」。これが業務システムを新しくする場面でのスローガンである。必ずこういう話が出る。今までやってる作業と同じことができるようにしてね、ということであり、ってことは、システムは新しくなるけど業務は新しくしないでね、ということであるが、この構図に気がついている人は、少ない。
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長い間使用されてきた業務システムは、長年連れ添った伴侶に似ている。日進月歩のIT世界において、数年、十数年前のシステムなんてのは性能面ではとことん遅れている。処理スピードは比べるべくもない。インターフェースの洗練度合いも全く違う。古いシステムは、動きも遅く、見た目も悪い。
ただ、長年連れ添っただけあってこちらの思い通りに動く。いつもの指示さえ出せば、いつものように答えを出してくれる。ちょっとクセがあったとしても、そのクセを織り込んだ上での業務フローになっているから、問題がない。しかも、使用している中でちょっとずつカスタマイズがなされている場合もあって、なおさら業務にぴったり寄り添うものになっていたりするのである。
この関係性を変えてしまうのがシステムの入れ替えなのだ。若く、新しいシステムは、動きがよくて、機能も多い。だが、新システムが今までと「同様の機能」を満たすかと言ったら、意外とそうでもない。操作方法の違いで終わればまだいい方である(それでも文句はいっぱい出てくる)。いろいろできるけど基幹業務ができないじゃんってことも多い。こうなると業務フローの方を合わせないといけないのだけれど、あまりそういう頭にはならないのがニホン的ムラ社会である。無意味で非効率だろうと、儀式は大事なのだ。
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なぜ基幹業務ができなくなっちゃう、なんてことが起こるのか。いくつかのパターンがが挙げられる。ひとつは、上に書いたように基幹業務自体が実は不必要であるパターン。必須と認識されているけども、そうでもないからシステム設計側がスルーしてしまう。
もうひとつはシステムの設計思想が根本から覆っているパターン。数年前に導入したシステムとはデータの管理方法が全く変わっている場合がある。システム側が想定している業務フローがアップデートされているのに、こっちの業務フローは凝り固まっていて動いていない。ITの世界の方が変化に敏感だったりするってことだろうか。
あとは昔からのカスタマイズが引き継げないパターンがある。積み重なったカスタマイズで使いやすいようになっていたのに、システムをごっそり入れ替えてしまうとそれらがついてこない。引き継いでよ、となると、パッケージになっているシステムを再度カスタマイズしなければならず、そのお金はないですよ、と言われてしまうのである。昔、導入したときにはカスタマイズしたんだけどねー、今はその費用出ないんだよねー、と遠い目をして呟くほかない。
ゆえに、新しくシステムが入るからと言って、業務が効率化するだとか、楽になるだとか、素晴らしい成果が出るだとか、そういったことにはならないのである。げに、むなしや。
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理想を言えば、システムの導入と業務フローの見直しはセットなのだろう。システムの流れ、業務の流れ、両方を見渡しながら調整を重ねていけるといい。この調整バランスがどちらかにぐっと傾いてしまうと、妙なトラブルが起こってしまう。
こういう二項対立は、二者の交流にかかっている。異文化交流と同じことで、お互いがお互いに通じなければならない。個人的には、もうちょっとIT的なリテラシーがみんなに備わるといいなぁ、と思う。あと、できればムラ社会内での自分の陣地守り合戦を控えていけるといいんだろうなぁ。そのへんのことについては、また機会を改めて書いてみようかなと思う。
m(_ _)m
なぜあの人の解決策はいつもうまくいくのか?―小さな力で大きく動かす!システム思考の上手な使い方
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