meta.kimura

感情の率直と、思索の明澄と、語と文との簡潔とです。

安住なく先駆しているか? 【慶応大学SFC Open Research Forum】


 11月22日、23日に開催された慶応大学SFC「 Open Research Forum 」
 略してORFに行ってきた。



 http://orf.sfc.keio.ac.jp/

 コンセプトは『 安住なき先駆 』

 SFCの各研究室で行われている研究成果の発表会だ。ゼミ単位の研究、
 個人の研究、発表の形態はさまざまだが、なんだか変人の熱気に溢れて
 いそうで、ワクワクしていた。

 こういう研究発表会があるだけでも、アウトサイダーな私としては、
 新鮮である。こういうふうに、研究発表をイベント化することで、
 「 研究を楽しむ 」ための仕掛けにもなっているのではなかろうか。


 会場は懐かしの六本木ヒルズ40F (GEIL2006の最終発表の会場である)

 第1印象はというと、



 「 しゅーかつ会場!?  Σ(・□・)! 」

 みんなスーツだ。なんというか、社会人の僕が浮いている状況は
 どうかと思う。もっと表現していこうぜよ、SFC生。。。

 ちらちらと見てまわったところ、確かに大学生の研究レベルとしては
 高いのだろ浮けども、、、何というか、案外普通である。

 いや、変人はちょこちょこいるのであるが、どうも何を見ているのか、
 歯切れが悪い感じがしてならなかった。

 「 なぜこの研究をやっているの? 」
 「 この研究の先に何を見出そうとしているの? 」

 という問いに答えを持っていたり、問いをものともしない勢いを
 持っていたりする学生はそこまで多くはなさそうだ。幻滅ではないが、
 現実を思い知らされる。

 ( と言いつつ、自分の大学生時代と比べると、やっぱりみんなスゴイ
   んだけどね~ )


 さて、その中でもおもしろかったのを2つご紹介。

 

 小林博人研究室 地方のデザイン ~場のヴィジュアリぜーション~

 建築系の研究室が滋賀県の田根という地域に入り込んで、何かしら
 いろいろと取り組んでいるらしい。関わりはじめて4年間。その集大成
 を本の形にしたという。壁に貼られているのは、地域の中のTips、つまり
 「タネ」を、1枚1枚のページに表現していったものだ。

 その名も、『 タネ ノ ネタ 』



 1枚につき1つのテーマ。例えば人口の推移を書いているページもあれば、
 田んぼのこと、水路のこと、児童数のことを書いているページもある。

 それぞれのページ番号には、関連するテーマのページ番号がふってあり、
 テーマごとのページがゆるやかにつながっている。



 なるほどなぁ~ と大いに納得。 地域を網羅的に理解するのに
 これほどスマートなやり方もあるまい。それぞれのテーマごと、
 地域資源ごとの文脈は、「 前提としてあるもの 」「 複雑に
 絡み合っているもの 」として、敢えてそこを追おうとしない。

 それよりも個々のトピックスをバラバラに集めていき、広く、浅く
 地域の全体像を「 なんとなく 」「 曖昧に 」そのまま見せて
 しまう。

 この一枚々々を眺めることで、ここでできるアイデアも浮かぶ。
 よくあるお堅い地誌より、何倍も使い勝手のあるアウトプットだ。 

 う~ん、お見事。 このアイデアは使える。

 ちなみに、梅棹忠夫『 知的生産の技術 』でこれと同じ方法を
 書いている。カード方式の応用ですな。


 ほい。 ほんでもう1つおもしろかったのが、「 hex 」



 簡単に言えば、正六角形のメモ帳である。
 西山さんという、慶応大学SFCの中学校からず~っとSFCに
 いるという変わり者(?)が考え出したものだ。確かに考えてみれば、
 私たちは四角いノート、四角いメモ帳にとらわれてしまっていて、
 それ以外の形が与えてくれるアフォーダンスに見向きもしていなかった。

 六角形だから並べてみたくなる。
 並べてみると、さらに発想は広がる。
 ちょっと薄くて透けるから、重ね合わせてみたくなる。

 ちょっとした発想を形にしたもの。でも、その可能性に気付いて、
 ちゃんと形にしているのがスゴイ。市販されたら、確実に買って
 しまいそうだなぁ。





 はい。 お気づきの方は手を挙げてくださいまし。
 この2つを紹介したら、もうこうするっきゃないでしょw

 『 タネ ノ ネタ 』 を 六角形 にしたら???

 ね。 なんかワクワクするでしょw


 こんなに単純なコラボレーションでも、研究発表会として
 出展して、同じ会場に並ばないと案外思いつかないもんである。

 そういう面も含めて、ORFってスゴイ仕組みだなぁ、と思う。

 そして、最後にやはり書かなければならないのが、SFCの捉える
 「 研究 」の幅である。SFCにおいて、研究は実践であるし、
 実践は研究である。だから、現場をもつし、形にすることを重視する。

 この、研究を見える形にする姿勢も、なんだか研究を楽しくさせて
 いる1つの要因なのだろうなぁ。

 なんだかんだと言われていたORFではあるものの、
 アウトサイドの人間からすれば相当におもしろいイベントなのだ。