meta.kimura

感情の率直と、思索の明澄と、語と文との簡潔とです。

【本】風の谷のナウシカ


【 『風の谷のナウシカ』 宮崎駿 】

  今さら読んだ。言わずと知れた名作なんだけど、漫画を読んだことはなかった。7巻一気に読もうと思
 うと、そうとうな気合と時間がいる。文字も多いし、内容も濃い。この前、風邪気味でぐったりしてたの
 を利用して、ここぞとばかりにがつがつ読んだ。久しぶりに読書したな〜って感覚になる。漫画なのに。

  風の谷のナウシカジブリ映画で有名だ。知らない人はいないと思う。子供の頃から、金曜ロードショ
 ーで何度見たことか。巨神兵の歩く映像を見て泣いたこともあった。今でも、年に1度はテレビで放映さ
 れてるんじゃないだろうか? ちなみに映画の封切日は1984年3月11日。生まれた年が一緒だった
 のは、知らなかった。。。(;・∀・)
  原作となった漫画の方は、途中で4度の中断を挟みつつ、1982年から1994年までアニメージュ
 で連載された。映画制作後も物語は続いていたことになる。だいたい漫画の2巻までの内容が映画になっ
 ている感じかな。実際に漫画を読んでみると、印象の違いに驚くと思う。キャラの描写も違うし、腐海
 位置づけも、最後まで読むと変わってくる。巨神兵の使われ方にもちょっとびっくりするので、気になる
 人は時間のあるときに一気に読んでみるといい。物語の密度が濃くて、時系列も前後するときがあるので、
 一気に読まないと、混乱してしまうかもしれない。その点だけ、お気をつけて。

  さて。別にナウシカで何を考えたとか、宮崎駿が何を言おうとしたとか、そういうことを書きたいわけ
 でもない。腐海は行き過ぎた人間文明で毒された大地を浄化させる存在みたいに描かれているから、裏っ
 かわには文明論とか、環境問題とか、そんな意識が流れてるんだろう。だからって、それを分析するのも
 野暮じゃなかろうか。シンプルに楽しめないもんなのか、と自分に言いたくもなる。
  ただ「 一枚岩じゃないなぁ 」って感触は深く残った。たぶん、ナウシカを通して描かれてるのは、
 腐海は環境を浄化するからイイよね!とか、人間は世界破壊しちゃうからダメだよね!とか、巨神兵は兵
 器だから絶対ダメ!とか、そういう直線的な構図じゃない。正解があったり、主張があったりする世界観
 じゃなかったんだなぁ、って思うのだ。
  むしろ、人が描写されていて、政治や権力や強欲がある。歴史を冷静に見つめ、相も変わらず同じ過ち
 を続ける人間への諦観と、それに立ち向かう人間の意志を信じる姿勢。この対置はファイナルファンタジ
 ーシリーズ(Ⅸあたりかな?)にも見られるし、わかりやすいとこでは天元突破グレンラガンにも出てく
 る。「 それでも、立ち向かう 」っていうのが、かっちょいいんだろうなぁ。破滅と知りながら、悲劇
 が起こるにも関わらず、死にゆく定めだけれども。やっぱり物語には逆説とか、矛盾とかがないとおもし
 ろくないわけだ。これが、ロジックに沿ってないと意味がわからなくなる論文形式との大きな大きな違い
 なんだろうな。

  不思議なことに、ロジックに説得力があるように、矛盾だらけの物語にも説得力がある。言語化がうま
 くできないもの、ロジックでは謝りだろうけども本質であるようなもの、そういうのを伝えていくのは、
 物語の役目なんだろう。そういう意味で、明確な主張はないけれども「 何かコレだろう 」と探ってい
 るような雰囲気は感じられる。明言できないような「 信念 」がなんとなーく伝わってくる。
  ま、そんなことを言っても、宮崎駿の作品を読んだのはこれが初めてなのだ。映画では何かに見てるけ
 ども。ちゃんと立体的に考えるならば、もう少し関連作品をあたっておくべきなんだろうなぁ。本は3冊
 で読め。編集学校でもよく言われることなのです。ヽ(´ー`)ノ



 m(_ _)m