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meta.kimura

感情の率直と、思索の明澄と、語と文との簡潔とです。

【本】安心ひきこもりライフ


【 安心ひきこもりライフ 勝山実 】

  しゃちょーから無言で差し出されたこの本。ブッダの表紙にスカイブルーの配色で、帯には「 これで
 親も安心! 」とある。シュール。シュールすぎる。激しくアンニュイである。内容がよくわかるいい表
 紙だ。表紙からケンカを売っている、とも考えられる。僕みたいな奴は、一目で共感する。イイことが書
 いてあるに違いない!!!そんな確信を持たざるを得ない。興味がある人は、是非手にとって、最初の見
 開きを読んで欲しい。笑うと思う。

  『 安心ひきこもりライフ 』はひきこもりの当事者がひきこもりについて独自の視点から愉快に、痛
 快に、痛く、切なく、書き上げた本である。著者の経験を軸にしながら、ひきこもりが何を大切にして、
 ひきこもりとして生きていくべきなのかが語られる。ママン(母)やダディー(父)との戦い、就労支援
 への違和感、アルバイトでの失敗。ひきこもりになって20年の著者の文章は、悲哀を突き抜けた笑いに
 満ちていて、かつ、既存の価値観に鋭く切りこむものだ。働くとは?自立とは?生きるとは?地面にしっ
 かりと両足をつけながら、布団にずっしりと背中を埋め込みながら、深い々々問いに向きあう著者の姿が
 浮かび上がる。

 ひきこもりの自立とは何か?

  自分で考え、自分で決断し、自分で行動することです。必ず失敗します。他人の言うとおりにやっ
 ておけばよかった。そんな後悔が自立にはつきものなのです。支配からの卒業は、ほろ苦いメモリー
 の蓄積になります。完璧な考え、完璧な行動もどういうわけかうまくいかないものです。何がいった
 い悪いのかが、わからない。自立した人間が必ずはまる落とし穴です。
  自立とは怖ろしいものです。全部自分のあやまちが原因ですから、他人を責めるわけにもいきませ
 ん。自分のおろかさを呪うのみです。自立とは正しく落ち込むことです。自立しなければ、心の底か
 らがっかりすることなどできないのです。
  自立とは、自分は他人よりすぐれているという、人類共通の思い込みとの戦いです。自分はほんと
 うはいい人だという信念が揺らぐことです。働いて、ひとり暮らしをすれば自立だと思うでしょう。
 そんなのは外側だけで、貧乏くさく、部屋でごろごろして、テレビばかり見ている。その己れの姿を
 自覚し、間違っていたと反省することが自立なのです。解放感があるうちは自立ではありません。苦
 行の中にこそ、自立あり。ジジイやババアといっしょに暮らすほうが苦行だと感じるなら、そちらの
 ほうが自立に近い。仲の悪い人間といっしょに暮らしていける社会性こそ、自立です。

  アンビバレントである。一方ではひきこもりブッダを目指し、ひきこもりが長びくことはよいことだと
 言い切っている怠け者だ。なのに、なんか、就労支援とかに詳しい。「 歴史編 」のまとまり方も、明
 らかに研究しないと出てこないクオリティになっている気がする。このタイプの複雑さは、認めたくはな
 いけど、若干、僕に似ている気がする。この怠け者は、明らかに怠けている。但し、考えている。
  怠けばかりに目がいく人にはうまく伝わらないだろうな。「 働かないで、ゴロゴロしてる奴が何を言
 うておるか! 」と、一喝してしまう方もいるだろう。もちろん、そんな方にわかってもらう気なんてな
 いんだろう。ただ、ひきこもりの支援をしてる人は、きちんと理解しておくべき考え方なんじゃないかな、
 とは思う。ひきこもりを社会に戻すんではなく、ひきこもりを突き抜けることで得る道もあるのだ。それ
 が不毛な道なのだとしても、社会状況的には、もうそれを模索していかなくてはならない時期に来ている
 のではなかろうか?そんなことも考えたりする。

  努力しなければできないことには手を出さない。普通の人があたりまえに、呼吸をするようにやっ
 ていることを、死に物狂いの訓練で身につけたところで、生きるのが嫌になるだけです。劣っている
 と感じることにはなるべくかかわらず、そっと他人に道をゆずりましょう。月見草でいいじゃないで
 すか。
  このままじゃだめだと言われても、変えようがないのです。変えようとすれば、死ぬより辛い人生
 になるのは目に見えています。本末転倒ですね。じゃあ、最初から安心できる生活を実践すればいい。
 あさっての方向に努力をしない。働いて苦しむのは間違いで、働かないことによる罰はよろこんで受
 け入れるという覚悟があれば、誰でも安心ひきこもりライフに参加できます。リスクを冒すとは、ひ
 きこもりの場合、前人未到の未来を受け入れることです。
  死にたいと思いながらがんばるより、いずれ死ぬんだとすっぱり諦めたほうがいさぎよい。暇の活
 用法だけ考えて、日々のびのびです。

  わかりにくい考え方だと思う。けど「 災害が来たときには、真っ先に死んでるかなヽ(´ー`)ノ 」
 とか言ってる僕は、すごく共感してしまう。自分に価値がないことを心の底から受けとめ、それでもまぁ、
 求められてるなら出ていこうか、ぐらいのノリだ。
  この生き方は、残念ながら、決して楽ではない。何せ悟りをひらく道なのだ。それはそれで、苦行だ。
 それなりの厳しさがある。どっちを選ぶか?どっちの苦労がおもしろそうか?ま、選んだところで、どう
 しょーもない自分からは、逃れられないんだけども。



 m(_ _)m

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