meta.kimura

感情の率直と、思索の明澄と、語と文との簡潔とです。

読書って、何をすることなのだろうか?

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 勢いにのって、本ネタ2つ目です。実はつい先日まで、編集学校を通して「共読ナビゲーター」というのをやっておりました。簡単に言うと、メールのやりとりで大学一年生に読書術を伝える、というもの。わたしなんかがやってもいいんかいっ!ってツッコミを自分に入れつつ、なんだかんだで七転八倒を楽しんでおりました。拙いナビゲートで、学生には申し訳なかった。m(_ _)m

 そんなことに少しだけ関わらせていただいてたので、しばらく「読書」というものに向き合っていました。「編集」はさておいて(←さておいていいのか!?)、できることなら学生さんの持っている「読書のイメージ」を思い切り壊してやりたい。そんな気持ちを持ってのナビゲーターになりました。

 

●◯。。。...

 

 「そもそも、何をもって、何がどうなったら、わたしはこの本を読んだ、と言えるのでしょうか?」

 共読ナビゲーター期間に学んだことはいろいろあれど、特にこの問いが頭に浮かんだときにはシビレてしまいました。自分の発見に、自分でシビレてるんだから、自画自賛ですね。そんなことはあんまり誇るもんじゃありませぬ。むしろここは、シビレてしまったことを恥じねばなりません。

 わたしがシビレてしまったのは、読書の定義という、とっても基本的なことを今まで抜かしていたからです。考えたこともなかったのです。その考えなしが今回、露呈してしまったのです。ああ、情けなし。

 では、改めて問わなければなりません。「読書ってなに?」と。

 

●◯。。。...

 

 読書って何なんでしょうね。本を読むこと。でも、具体的にどうなったら本を読んだといえるのでしょうか。最後までページをめくっても、全然頭に入らないなんてことはよくあります。読めた読めたと思っていても、本の内容を聞かれたら答えられない、ってこともしばしばです。

 例えば、わたしが最近読んだのは『ファシリテーション 実践から学ぶスキルとこころ』という本です。ワークショップだのファシリテーションだのに首を突っ込んでいるくせに、中野民夫さんの書いた本って読んでなかったなぁ、と思って読んでみたのでした。首を突っ込んでいる分、内容はスラスラ読める。ああ、こういうことあるよなぁ、なんて自分の経験と対照させて、楽しく読みました。が、しかし。本に書いてあったスキルを3つ答えよ、なんて言われても答えられません。カンニングしなきゃ無理です。(^_^;)

 さて、これは、読書なのか、そうでないのか。どっちでしょうか?

 

 

 そういえば、内田樹さんだったかがどこかで「積ん読も読書である」なんてことを書いていたような気がします。積ん読、買ったのに読んでない本が積み上がっているのを見て、何かしらの圧力を感じる。それもまたひとつの読書体験だという話だったと思います。なるほどなぁ、と納得したものでした。

 ここまでいくと、もはや読まないことさえ読書です。何が何だかわかりません。しかし、わたしも積ん読は読書だと言い張りたい気分なのです。「積ん読読書派」です。だって、いっぱい積ん読しちゃってるから。。。(言い訳)

 

●◯。。。...

 

 思うに。読書のイメージが狭すぎるのです。本を読んで、著者の意図を理解して、内容を飲み込んで、パタンと本を閉じて、メガネがキラーンと光る。そんなのばかりが読書じゃないでしょう。もっと自由でいい。わかんない本にはわかんないと言っていいし、4択のうちどれが正解かを当てる必要もない(受験生以外は)。もっといろんな本の楽しみ方、使い方があって、そこを意識できるか否かで読書体験は変わってくるのだと思うのです。

 ただし、ここでいう自由は、自分勝手とは違います。自由だからといって、「筋トレは楽しい」という趣旨の本を「筋トレはつらい」と読み替えてしまってはいけません。読書は本とのコミュニケーション。相手を尊重して、向き合う姿勢は持つべきでしょう。そのベースがあった上で、付き合い方は変えればいい。友達のように関わってもいいし、師匠だと思ってもいい。工具のように必要なときに必要な機能をピックアップするもよし。気分転換のレジャーにしてもよし、です。そのうち、その付き合い方にあった本を選べるようにもなってきます。

 毒に出会ったときには毒を飲み、羽をさずけられて空を飛び、枕になってぐっすり眠る。そんなことも読書ではないでしょうか。本から影響を受け、本と会話し、怒ったり、泣いたり、違和感をもったり、投げ出したり、感動したり。それら全てが読書です。正確に読み取ろう、なんて圧力に潰されることはありません。そんな圧力を感じてるから、結局こわばって動けなくなってしまうんです。

 

 もっと遊んで、新しい本との関わり方をつくってみてはどうだろうか。やっぱり本の内容を正しくまとめようとしてしまう真面目な学生さんをみつつ、もったいないなぁ、と感じたのでした。

 

 

m(_ _)m

 

 

ファシリテーション 実践から学ぶスキルとこころ

ファシリテーション 実践から学ぶスキルとこころ