meta.kimura

感情の率直と、思索の明澄と、語と文との簡潔とです。

雲州平田一式飾がとってもシュールでキュートな件

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 雲州平田に行ってきました。知らない人はどこそれ?って感じだと思います。出雲と松江の間にあって、宍道湖の北西ぐらいの地域です。地図でみるとだいたいここらへん。

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 宍道湖づたいに回船も入ってきてたそうで、昔は栄えた地域だったのでしょう。木綿街道沿いにはいい門構えの家もありますし、日本酒とか醤油をつくってるところもちらほら。道にもいい香りが漂います。ヨダレがでますな。

 しょうゆソフトクリームとか、醸造所の見学とか、醤油の味比べなんかもできてわりと楽しく遊べるスポットです。それなのに人が少ないのもいいところで、ゆったりまったりです。

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 さて、そんな雲州平田で出会いましたが平田一式飾。そのまんま、ひらたいっしきかざり、と読みます。これがなんというか、ツボにはまってしまいました。いやぁ、よくぞ残っていてくれた、こういう文化っ。

 歩いているとちょこちょこ出会う平田一式飾。最初はへー、ほー、ふーん、ぐらいのもんでしたが、そのルールを知って反応がほほーう、に変わりました。
 1、身近な日用品でつくる。
 2、ひとつの飾りは一種類の日用品でつくる。
 3、解体したときに再度日用品として使えるようにつくる。
 なんとまぁ、素朴なルールでしょうか。これぞ民芸って感じです。だいたいにおいて、日用品でつくる必要も、再度日用品として使う必要もないんです。それなのにルールとして制限してしまう。合理性からかけ離れた不明さがゲーム感を醸し出しています。そして、その制限があるからこそ、様々な創意工夫が出てくる。背景がわかると見る目も変わってきます。

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 自転車でつくられたエビです。陶器が多い平田一式飾の中では異色でしょうか。いや、しかし、なるほどエビに見えます。甲殻類の固さ、カチャカチャした感じがよく合ってます。見事なもんです。

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 でもって、こちらはバイキンマン。ぎゃーーーって叫びたくなるぐらいに怖い、いや、シュールです。崩壊度で言うと、後ろにあるアンパンマンの方が高いでしょうか。材料や作り方の制限が、独特の味を出してしまうのですな。

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 うーん、これはムーミンだろうか。。。(;・∀・) 奥のスナフキンはなかなか巧い。パイプの先はおちょこになっている。見立てが楽しいですな。
 身近な材料を組み合わせる民芸だけあって、モチーフにも寛容なのがまたいいところです。変に固くなっていない。弁慶、とか伝統的なシーンもあるけども、こういう親近感があるものにも躊躇なく適応させていくやわらかさには見習うところもありそうです。
 ちなみに、この雲州平田一式飾、毎年7月にはコンテストもあるようで、去年の「特選」のモチーフは「世界のケイ」でした。錦織圭ですね。完全に時事ネタです。

●◯。。。...

 こういう文化って、きっと好きな人が一定数いないと残ってこれなかったと思うのです。地域のおっちゃんなり、おばちゃんなりが、なぜだか好きで、なぜかその地域の名人みたいな人がいる。きっと平田一式飾のためにお皿を買い込んでしまったりもしたのでしょう。だから廃れそうになっても保存会ができて、何とか今につないでいる。そういう文化なのだと思います。
 解体して再度日用品にするかというと、たぶん、そうでもない。もったいないっちゃ、もったいない。でも、それをあーだこーだ言うもんでもなくて、遊びで、酔狂で、その土地の粋がある。
 平田一式飾は、現代な目線から見ればとってもシュールで、その土地の愛やこだわりが感じられるニクい奴でした。こういうのを見つけるとなんか嬉しくなってしまいます。

 

m(_ _)m