meta.kimura

感情の率直と、思索の明澄と、語と文との簡潔とです。

『暮しの手帖』。。。おそろしい子!

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 土曜の午後。友達に会ったあと、ふらりと「古本 冬營舎」に寄ってみる。いつの間にかレイアウトが変わっていた。入って、左手に雑誌、真ん中に座席、右側に単行本などなど。雑誌コーナーの真ん中には『暮らしの手帖』の二世紀が積んであった。
 ちゃんと読んだことはないなぁ、なんて思いながらてっぺんの『暮しの手帖』を手にとる。たしか第二世紀の30号で、1974年の発行だったかと思う。絨毯とショッピングカートの商品テストなんかが特集されていた。なんとなく絨毯の特集を読んでみることにして、ジンジャエールを頼んだ。(ここはほんとに古本屋なんだろうか。。。)

●◯。。。...

 テストされていたのは、5種類だったか6種類だったかの絨毯。「純毛の絨毯の方が長持ちする」というのが本当なのかどうかを検証するという内容で、高いとか安いとか、純毛だとかアクリルだとか、値段や素材が違う種類の絨毯がバランスよく選ばれている。条件をなるべく同じにするために、色は緑色に統一。暮しの手帖編集部の階段や廊下に貼られて、さらに、何回踏まれたかを調べるためにカウンターを設置。3年間かけてのテストとなったらしく、45万回踏まれたところで今回の特集記事にまとまったようだ。6ページぐらいの記事に、ものすごい手の込みようである。
 検証結果は、必ずしも純毛素材の絨毯の方が長持ちするわけではない、とのことだった。アクリル100%の絨毯の耐久性もよかった。他の絨毯も家庭での使用と考えれば8年ほどはもつのではないか、と書かれている。
 実験の経緯を書き、条件を揃え、ビフォアーからアフターまで記録する。地道な作業をひとつひとつ丁寧に積み上げての検証の説得力は強かった。そして、素人にもわかりやすい、シンプルなやり方が心地よかった。企業の販売戦略にとらわれない姿勢には、ネットの検証動画みたいなものを連想してしまった。

●◯。。。...

 ページをめくる。次に出てきたのは、秋田県の冷凍食品販売の話。各家庭に冷凍庫を月300円で設置する。その冷凍庫には毎月冷凍食品が届き、冷凍食品は食べた分だけ代金を払う。富山の薬売り方式で冷凍食品を普及しようとする主婦たちの話だった。
 まだ冷凍食品は一般家庭に浸透していなかった。記事によると、秋田では共働きをしなければならない家庭も多く、手軽に調理ができる冷凍食品のニーズは高かったようだ。主婦向けの冷凍食品講習会が開かれ、その縁でつながった卸売り業者と主婦が事業を立ち上げる。コントラストが強く、じっとりとした白黒写真に写る立ち上げメンバーの姿は、なかなかにかっこいい。
 利用者の声にも驚く。インタビューをした人の言葉、秋田の方言がそのまま書き写されているのだ。これは明らかに意志を持った編集方針だと思った。敢えての聞き書きなんだろう。利用者に支えられての真剣な取り組みが続き、なんとか軌道に乗っているというようなところで記事は終わる。

●◯。。。...

 すごいな、と思った。こんなに気概に溢れている雑誌だったのかと、驚いた。女性として生きる、生活を支える、本当のところを見極め、世の中をよくしていく。その誇りをビシビシと感じた。圧倒された。
 今度、曽田文庫に行ったときには『暮しの手帖』のバックナンバーを拾い読みしてみようと思う。ありがたいことに、曽田文庫には結構な量のバックナンバーが集まっているのである。

 

m(_ _)m

 

 

花森安治のデザイン

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