meta.kimura

感情の率直と、思索の明澄と、語と文との簡潔とです。

もう終身雇用なんて守らなくていいと思っている

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 トヨタの社長が終身雇用難しい発言をしたとかいうニュースが聞こえてきた。もう時代も令和だし、そろそろそうなるだろうなぁ、なんて転職まみれのぼくは呑気に受け取った。そりゃあ、そんな雰囲気にもなってくるだろう。日本型経営を続ける企業があってもいいが、みんながみんな同じ方針になる必要もない。トヨタなんて大変なグローバル企業なんだし、日本をリーディングしまくってきたんだし、それなりの時代対応があってもいい。右にならえとトヨタ便乗しちゃう同調圧力に結構ヨワヨワな企業群が出てくるのが、危険ではあるけども、それもまた、新しいフェーズに移行していくための試練ってもんかな、って思う。戦国時代が下剋上のチャンスだったように、大変な時代がくることが一概に悪いってこともないのだ。
 ってなことを考えていたら、どうやらトヨタ社長の発言はマスコミが捻じ曲げたものらしいってなニュースも流れてきた。それらを見るに、難しくなってきているから雇用を守っていくために税の優遇とかを考えてもらえんかね、という意図の発言だったらしい。一方で、転職サイトなんかを眺めるとトヨタの求人は多い。もちろんハードルは高い。けども、転職者の活用をすすめていこう的な雰囲気もあるらしい。噂程度のものだけど、それもそれで納得できる。新卒からの勤め上げコースって、そこまで当たり前のものでもなかったし、これからもっと人の動きは活発になってくるだろう。

●◯。。。...

 トヨタ社長の前に、経団連の会長が終身雇用を守れないという発言をしていたらしい。こういうのを後追いで知るあたりで、ぼくの情勢への疎さがよくわかる。いつもラジオのニュースを聞き流しているだけなのは、サラリーマンとしてどうなのか。
 それはともかく。
 やっぱりどうやら、状況は変化しているらしい。経団連の会長が言い出したのだから、それなりの影響力はあるだろう。いろんな会社の経営者が、うんうんそうだよな、終身雇用きっついよな、そろそろ守れないよな、どうにかせんとな、となっている可能性はある。いいことだと思う。70歳まで雇ってくれ的な要望が出てきているってなニュースもある中で、ずっと雇用し続けるのは大変だろう。
 思いっきり脱線になるけども、70歳まで雇い続けるってのはとんでもない話である。古い価値観は残ってしまうし、新しい考え方には馴染まなくて扱いづらい人材が居続けるってことだ。もちろん、個別の事情によるけども、全体的にはその傾向になりそうだという予測はできる。では、有能な人だけに残ってもらうようにすればいいか。それも難しいだろう。年上の人の能力を評価できる人がどれほどいるかを考えるべきだ。往々にして、潔く身をひける人の方が賢明であるということも、頭に入れておかなければならない。これらを考慮に入れた上での70歳まで雇用施策というならば、それはそこまで逼迫した状況があることを示す。が、まぁ、これは票数確保の政治的な意味合いの方が強いようにも思える。脱線終わり。

●◯。。。...

 人件費ってのは基本的には上がり続ける。なっかなか下げられない。年収が下がったり、降格されたり、解雇になったりが、今より簡単にできるようにならないと、人件費で柔軟に対応するなんてことはできない。そこを何とか柔軟にしようとしての、非正規雇用であったが、これは研修や経験の不足を招いてロースキル&ハイエイジな人材を量産するに至ってしまった。
 安定的地位を確保していた正社員はどうかというと、こちらも意外とロースキルなまま役職だけ上がってしまった。とんでもなく論理的思考ができない人がなぜか上にいらっしゃる、ってなことはよくあることである。人間力が高いとか、カリスマ性があるとか、そういうわけでもなかったりするから、大変厄介である。
 おそらく彼らは有能な後輩であったのだろう。ムラ社会ニッポンの中で、先輩に可愛がられるスキルが高まった方々といえる。上位層の好みによって下位層から引っ張り上げられるシステムを採用してきたムラ社会ニッポンにおいて、能力とは「誰々さんと仲がいい」であった。ムラの中にいて、ムラの有力者と仲がよければ、ムラの意見はよくまとめられる。これが調整力である。最も重視される力だ。
 決して、文章が読める力であったり、複雑な数式を理解できる力であったり、段取りを組み立てる力とか、すばやく事務処理を遂行できる力、提案をわかりやすく説明できる力、ではない。成果を出す、出さないに関わらない。仲のよさ、である。それが本質だ。いくら人工知能に詳しくても、仲がよくなければ企画は通らない。仲がよくなるために、その他のすべての力が使用される。その構造は、けっこう切ない。
 そして、その構造にフィットしていたのが、終身雇用である。

●◯。。。...

 ムラにおいては、ムラに長く居続けた者の発言力が強くなる。ゆえに、長く居続けた者の能力は高く、成果も上げやすくなる。これが年功序列賃金と終身雇用の源泉である。つまり、ムラであれば、終身雇用には経営上の妥当性がある。
 これが、先の発言では「守れない」と表現されていたことに気づくべきだろう。終身雇用が経営上の攻め手とは見なされていない。守るべきものとなっている。ここの感覚が既におかしい。我々は経営環境が変化していることを既に知っているということだ。トヨタ社長の発言にも、この意味合いはあらわれている。経営的に攻めの施策であれば「難しくなる」ことはない。
 モデル的には「集合と定着」から「集合と離散」に変わってきている。ムラが開かれつつある、というのはぼくの希望的(要望的)観測ではあるが、グローバル企業であれば、村民解散の雰囲気もそれなりにあるだろう。仲のよさより人あたりのよさの方が大切になる。長い付き合いよりも集まったときに持っていける能力の方に重きが置かれる。集合と離散の繰り返しがゆるいコミュニティを生み出すが、コミュニティは生活の保障をするほどのものではない。依存ができない分、意外と厳しい。
 こういった環境変化が否応なく進んでいると、考えた方がいい。その上で、企業ごとの戦略を考える。ぼくは、それらをわかった上で終身雇用や年功序列を選択する企業は凄いと思うし、そのロジックと信念を尊敬する。理念がどこに向かっているかを、ちゃんと認識すれば、その戦略は理にもかなうものだ。
 逆に、もう守れないんだよね、と言ってるのであれば、それは怪しむべきだろう。単なるエクスキューズか、構造を見誤っているかのどちらかだろう。本気で守ろうとするならば、それを攻め手として使う。

●◯。。。...

 勢いに乗って、愚痴みたいなことをつらつらと書いてしまった。あまりのまとまらなさに反省する。ストレスが溜まってんなぁ、流してもらえたらありがたい。
 だいたい、終身雇用なんて幻だったのである。世の中の労働者の、どのくらいの人たちが1つの企業に勤め上げられたのだろうか。だれかきちんと調査してみて欲しい。70年代であっても、4割いたかどうかぐらいじゃないだろうか。この国は、一部の人達をメインストリームとして取り上げ過ぎる傾向にある。
 終身雇用を契約として入社したわけでもないだろう。なんとなく、そんな風習があるに過ぎなくて、それはひとつのあり方でしかない。自分を見極め、人を見極めて、それぞれに生存戦略を練っていけばいい。
 戦国化しつつある社会で全体最適しようとすると、歪みがたくさん生まれてしまう。手元の部分最適の積み重ねが良策だろうと、思う。タフな時代だなぁ。

 

m(_ _)m

 

 

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