meta.kimura

感情の率直と、思索の明澄と、語と文との簡潔とです。

ワークライフバランスは暇人を生むか?


【 わたしの場合、とりあえずカメラだけあれば暇にはならないとおもう。。。 】

 ワークライフバランス社の小室さんの本『「3人で5人分」の仕事を無理なくまわす!ー「欠員補充ゼロ」の職場術』を読んでみています。自分自身、柄にもないもんを読んでますね。内容のよしあしって話ではなくて、わたしっぽくはない本です。ただ、ワークライフバランスってのはこれから避けられんテーマではないのかなぁ、ということは考えてまして。ま、自分のスタイルを見直す手がかりにはなります。

 さて、本論に入る前にワークライフバランスって何か?ってのを書いておかねばなりません。この言葉、よく誤解されてしまいます。ワークライフバランスと聞くと「早く帰ってプライベートを楽しんでね♪」と捉えられがちなのではないでしょうか。そういう意味も確かにあるんですけど「早く帰ってぐだぐだとテレビを見たり、ニコニコ動画見たりして過ごしてね♪」ではありません。残業しないでワークとライフのバランスを取りましょう的に理解してしまうとズレが生じます。わたしの理解ではワークもライフも充実させて、シナジー(相乗効果)を生みましょう、ってことかと。だから、ただ早く帰って休んでるだけじゃ意味がないんですね。怠けてちゃダメなんです。いや、休んでてもいいのかもしれませんけど。
 わたしの理解では、ワークライフバランスはそんなニュアンスです。で、その文脈において語られるのが「業務は効率化して早く帰るのがいいよね論」v.s.「そんなの無理だからちょっとぐらい残業させてよ残業させてよ、、、あれ?結構長く残業してるけど仕方ないよね論」です。わたしはどっちにも共感はしませんが、なんとなく事情の理解はできます。効率化はきつきつしてて嫌いです。残業しなきゃなんないときもあるってのもわかりはしますが、わたしは帰りたい(笑)。

 まぁ、読んでるといろんな残業しない/させないアイデアが出てくるんです。でも、その提案に対して「そんなこといっても・・・」と残業派が食い下がる。みんな結構残業したがりなんですね。びっくりしました。そして、同時に「この人達は家に帰ってから何していいかわかんないんじゃないか」って仮説が思い浮かびました。
 例えば、30代前半独身男性をイメージしてみます。当たり前かもしれませんが、帰っても独りです。18時に退社したとして30分通勤なら19時前には家に着きます。そこからだいたい寝るのが24時とすると、家にいる5時間をどうやって過ごすんでしょう?(この5時間って長く思えますか?わたしにとってはすっごい短いです。。。笑)もちろん夕食をつくって、お風呂に入って、生活の雑務をこなしていく必要があります。一方で、それだけでは埋まらない時間は、さて、何をするのでしょう。テレビを見るか、ゲームをするか、本を読むとか、うーんと、、、あとは何でしょうかね?友達と遊びにいったりすればいいじゃん的な発想もありかとは思いますが、いかんせん、想定している男性は独身です。独身には独身たる所以があるもんですので、その辺は推し量ってくださいまし(笑)
 ま、こういうひとつの例だけで語るのは強引ではあります。でもでも、結婚も子育てもない独り身には夜の淋しさはこたえるわけです。たぶん。秋の夜長なんか、自分の部屋で「なにやってんだろーなー」とか物思いに耽っちゃったりする時間ができちゃって、いつのまにやら「こじらせ系」みたいな感じに自虐ネタ走って、リア充爆発しろ的わたモテ世界観まっしぐらなわけでしょう、そうでしょう。あ、ちがいますか。すみません。m(_ _)m
 要はこういう人に対して、本質的なところ考えずに「ワークライフバランス推進しなきゃなんないから、はよ帰ってね♪」なんて言ったところで、暇人が増えていくだけなのです。また「早く帰ったら時間を自己研鑚に使ってね♪」って伝えてみても、そもそも自己研鑚ってなんだろう?なわけです。人脈づくりとか、さらにどうやっていいやらわかりません。定年して仕事しなくてよくなった老人のごとく、途方に暮れてしまいます。遊びにいくにも「残業してないから、あんまし遊ぶ金もねぇなぁ」って思考が浮かんでくるのではないでしょうか。

(あ、ちなみに、自己研鑚を真に受けてビジネススクールに通っちゃえる方も大勢いらっしゃると思いますが、それってほとんど社畜やないの?って感じてしまうのはわたしだけでしょうか。業務時間内でできなくなった研修を、会社が負担することなく、残業代も出すことなく、「今は個人個人が市場価値を上げないといけない時代だからね、ね、ね」という圧力のもとで自己啓発に向かわせる。まぁ、その個人に状況を利用しようとする独立基質が備わっていればいいとは思いますが、なんとなく時間ができてビジネススクールってのは若干の気持ち悪さが残ります。そーゆう人は、はよビジネススクールで結婚相手みつけて、結婚して子供産みなさい。わたしには無理ですが)

 つまりつまり。ワークライフバランスを実現するためには、ライフの過ごし方/充実させ方を身につけている必要があって、それがないと単なる暇人がお金もないのに引きこもって不安なひきこもりライフを謳歌するわけです。
 振り返ってみると、ライフが充実してる人ってあんまりいないんですよね。いわゆるリア充がわたしの周りに少ないのは、うん、知ってますので、それは脇に置いておいて。わたしが普段接している方でも、趣味が充実している人は案外少ない。趣味は何ですか?と言われて即座に答えられる人は、実は、稀なのではないでしょうか。何でもいいからつくればいいのに、やってみればいいのに、わりにテレビ/ゲーム/インターネットな枠から抜けない印象があります。個人的には趣味の中に「生産性」が感じられるものがあるとライフが充実してくると思っていますけども、それはそれで長くなりそうなので割愛しておきますね。

 実際には誰も「ライフの過ごし方」を自分が知らないとも思ってないし、教えた方がいいとも思ってないし、教えられるような機会もあったようなないような、なんです。だからかどうかはわかりませんが、早く帰ったらライフが充実するんじゃないか幻想に取り憑かれてしまう傾向がある、、、ような気がします。職業体験も大切だけども、生活体験(もしくは余暇体験?)も大切になってくる。そこまで面倒みてられねぇや〜、って感じですよね。わたしも書いていてそう思います。でも、実際に、ここに書いてきたようなケースはあるんじゃないかなぁ〜って気はしています。

 「結局のところコミュ障で非リアな自分が悪いんでしょ」ってことではないので注意してくださいね。ライフの過ごし方がわからないのはたぶん社会構造的問題であって、個人の問題ではありません。だからこそワークライフバランスって概念の使命として、早く帰るノウハウばかりではなくてライフ充実ノウハウも伝える必要があるんじゃないかと、個人的にはそう感じるのです。さらに言うと、ワークとライフを行き来しながら相乗効果を発揮させる、ワークとライフをつなげる方法も伝えていかねばなりません。
 ワークライフバランスという言葉のよさは、そのわかりやすさにあります。一方で、ワークとライフを二項対立させてしまうという限界も含まれています。日本仕事百貨の「生きるように働く」ではありませんが、ワークもライフもどっちがどっちかごっちゃな世界がもともとです。ま、それは理想に過ぎる感もありますけどね。

 わたしは一刻もはやく帰りたいです。ニコニコ動画みたいですし。その活動が仕事に活かされてるかどうかはわかんないですけども、アニメとかからもいっぱい教えてもらってます。昔、ゲームにハマったことのある方ならわかっていただけるハズ。遊びから学んだことの方が、多いんです。



m(_ _)m