meta.kimura

感情の率直と、思索の明澄と、語と文との簡潔とです。

最終出勤日を終えて。

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 昨日、朝7時。いつも通り、出勤する。3月なのに、急にぐっと冷え込んだ。電車に乗って、バスに乗り換え、通勤時間はだいたい1時間強。挨拶をして、フロアに入った。デスクに向かって、パソコンの電源を入れる。後ろの窓のブラインドをあけて、ダウンコートをハンガーラックにかける。いつもの動作を繰り返した。
 今日が最後と考えれば特別な日になるし、意識をしなければ日常となる。3月16日に思い入れがある人の方が少ない。書類を片付け、デスクを片付け、残った業務の引き継ぎを済ませる。少しおしゃべりもする。名残を惜しむ。
 16時。余った時間でつくっていた便利VBAの作成を諦める。あと半日、集中時間をとることができたらなぁ、と思ったけど、だからといってロスタイムがあるわけでもない。後ろ髪をひかれつつ、お菓子を持ってフロアをまわりはじめた。また会う機会がある人もいるかもしれないけれど、ほとんどが、たぶん、もう会うことのない人たち。出会ったのであれば、今生の別れがあるのも必然だけれども、やはり、淋しいものは淋しい。いろんな人に、たくさんお世話になった。それぞれに、お元気でと、言葉を交わす。
 17時半。退勤ボタンを押す。パソコンを引き継ぐ。デスクの引き出しが空になっていることを確認して、お先に失礼します、お世話になりましたっ、と声をかけてフロアを出た。建物を出てから、振り返って一礼する。短かったが、それなりの経験をさせてもらった。よいも悪いもあって、その全てに頭を下げたい気分だった。

●◯。。。...

 この歳になって、退職が淋しいものになった。昔はもっと、ずどんっと解放されるような感覚だったのに、そんな自由を感じることはない。前の会社を退職するときもそうだった。喧嘩別れでも、脱出でもない。納得をして、それぞれの道があることを知って、それならば、さようなら、という気分。もらった恩は、どんどん背中に積もっていく。
 夜は珍しく梅酒を一杯だけ飲んで、翌日には非常に珍しく(おそらく人生初の)二日酔いになった。頭痛がひどくて、仕事がない日でよかったと思った。
 この1年半の自分の仕事っぷりは、とてもよくないものだった。だから、今回の退職に際しては、申し訳ないという気持ちが強い。パフォーマンスが出せなかったのは、わたしのせいばかりでもない。それでも、ここまで何もできず、何もせずに去るのは、振り返ってみれば、あまりよろしいものではなかっただろう。
 足跡は残る。フラフラした頭で、いつか、お返しができたらいいなぁ、なんてことも考えてしまう。他人の力になれる人間になりたいもんである。

 

m(_ _)m