meta.kimura

感情の率直と、思索の明澄と、語と文との簡潔とです。

もうPDCAなんて言うのはやめないか。


【 PDCAを唱えて、自転車に乗れるようになったわけでもあるまいて。 】

 去年の秋ぐらいのこと。兄からFacebookでメッセージが届いた。曰く「PDCAの説明がみんな微妙に違う。Actionってなんなん?」とのことだった。またか、と思った。そして、兄がちゃんと考えられる人でよかった、とも思った。兄の質問には「PDCAは使えないから、Plan-Do-Seeで考える方がいいよ」と答えておいた。気になって調べてみたら、Wikipediaには「A」はActだと載っていた。どっちやねん。
 そう。このPDCAってのをまともに考えると、必ず行き詰まるのである。なぜこんなに使えない概念が広がったのか、わたしには理解ができない。もちろん、それはわたしが「本当のPDCA」に触れたことがないからなんだけど。それにしても、そろそろこのPDCAの濫用を止めなければならないのではないだろうか。


●◯。。。...

 問題はPDCAの「A」である。このAを理路整然と説明できた人に出会ったことはない。改善だと聞いたこともあるし、Checkで出てきた問題への対策だと聞いたこともある。ちなみにWikipediaでは処置・改善となっていて、「実施が計画に沿っていない部分を調べて処置をする」だそうだ。これを文字通り解釈すると、計画通りの遂行を促す段階となる。ということは、わたしがイメージする「改善」とはちょっと違うニュアンスになってしまう。現状を更に良くするのが改善であり、計画から外れたものを戻すことを改善とは言わないだろう。じゃあ、Aってなんなのだ?
 このAを加えたことがPDCAの革新的なところだったのだろうけども、そのせいでやたらに混乱を招いている。Checkで評価したものをもとに、対策をPlanしてDoしたらいいじゃん、なんて思った方も多いはずだ。You、そんなタラタラやってんじゃダメヨ〜。Planなんてする間もなくActionなのさー。っていう人もいるかもしれない。それはそうかもしれない。でも、そんな即行動が許されるなら、フレームワークを用いる意味ってなんなのかを問うてしまう。
 AにはPlan、Do、Checkが全てつまっているようにも思えてくる。そんでもってActionなりActした後のCheckはなぜか見逃されている。このサイクルは既に成立していない。

 PDCAサイクルを2つの段階で捉える人もいる。それはそれでありだろう。プロジェクトを進めているとPlanなんてそうそうやっていられるもんではない。だから、Planを練って実行(Do)するまでを前半とする。あとはそのプロジェクトを進めながら、定期的にCheckとAction(Act)を繰り返す。CとAは何回もまわる小さなサイクルなのだ。そして、プロジェクトが終わったら最後のCheckをして、次のPlanにつなげていく。この理解なら、納得できなくはない。納得できなくはないが、ならなんでPDCAをひとつのサイクルと捉えるのかはわからない。


●◯。。。...

 結局のところ、うまく腑に落ちないのである。フクザツなのである。フクザツでわかりにくいこと、というのはそれだけで味わい深いものでもあるのだけれども、しかししかし、いやいや、実際のところ運用しようという場面ではシンプルさが勝つ。誰でもわかる制度が一番いい。運用するのは人なのだから、なるべく全員がわかるような形にするのが楽なのである。
 何も背伸びをしてPDCAと唱える必要はないのだ。百害あって一利なし、とまでは言わない。それなりの示唆は与えてくれるフレームワークなのだろう。でも使えないものに執着することもないのだ。
 PDCAってよくわからんなぁ、と思っている方がいるとしたら、わたしはその人の味方である。思い切って、そんな考え方は捨ててしまおう。自分たちで使いやすいやり方をつくればいい。考えて、実行して、振り返る。日々の改善を意識する。それだけでいい。肩の力を抜こう。
 どうせモノゴトはそんなに思い通りに進むものではない。みんなが既に知っていることだ。何かしらの制度を運用するというのは、予想外の事態が当たり前に起きることを覚悟しておくということなのだ。


●◯。。。...

 理解もできないのに、使えもしないのに、PDCAなんて言うのはちょっとやめておこうじゃないか。わかりやすくて理解ができるところからはじめよう。みんなが使っているからといって、その言葉が、その考え方がわかりやすいわけじゃない。腑に落ちなかったら、誰かに聞いてみればいいし、それでも腑に落ちなかったら、そっとそこから離れて、自分の腑に落ちる形を探してみればいい。流布する言葉に流されてしまうよりは、その方が気持ちいいだろう。

 もし、誰かがPDCAを解説していたら、ちょっと聞いてみて欲しい。そのAって何ですか?と。なぜAをつけるのですか?と。納得ができる答えが返ってきたら、その人は本物なのだろう。よくわからない回答で煙に巻かれたなら、そういうことなのだなぁ、と思えばいい。わからないということをわかっているのと、わからないということをわからずにいるのでは、だいぶと心持ちが違うのだと思う。



m(_ _)m