コロナでうなされながら、読んだ。なかなかに分厚い。500ページ近くあるから、長編小説、と言っていいだろうか。こんなに長い物語を読み切るのは、久しぶりだ。2年ぐらい前に読んだ『白い巨塔』以来かもしれない。読了後の読んだった感はすごい。
ただ、読んだものの、内容が頭に入っているかと言われると、甚だ心もとない。登場人物の名前が頭に入って来ないのは、カタカナだからだろうか。日本史選択の哀しさである。加えて、いくつもの話が交互に現れ、交錯する。火星への有人飛行、米国の大統領選挙、東アフリカで行われている紛争。AR、ホログラム、無領土国家、SFらしく近未来の考え方、技術も盛りだくさんである。頭がついていかない。イメージにカロリーを使う。作者の想像力に感嘆する。
特に難しいのは分人主義という思想だろうか。作品中にも解説が割り込んできているし、別で分人主義について書かれた新書も読んだことがあるから、それなりに理解しながら読んだつもりではある。だけど、分人という捉え方がそれなりに一般的に受け入れられている状況で、登場人物によって気軽に振り回されると、読んでる側はそのたびに頭をぐるっと回転させないといけなくなる。
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Aさんと会っているときにはAさん用の人格が現れ、Bさんと会ってるときにはBさん用のわたしになる。個人が持っている自己は1つじゃなくて、いくつものdividualに分かれているという分人主義の主張は、それなりに共感できる。
自己は他者との相互作用で形成されているし、確固たる自分なんてもんがあるとも思っていないからだ。職場の自分と家庭の自分は別々の人間であって、どっちも自分である。特に違和感はない。ただ、その分人達のバランスだとか、一部の分人の抑圧だとか、過去の分人がどうのこうので未来の分人が溢れて、って話になると、途端にややこしくなる。分人達の統合管理本部を想定すると、じゃあそれが真の自分じゃん、となりそうになるから、あんまりそういう理解はしたくない。けど、各分人が一人親方過ぎると、多重人格に近くなってしまう。そういうこっちゃない。自己は相対する人との相互作用なのだ、と、思いたい。
●◯。。。...
なんかバランス問題に陥ってしまう分人主義な感じだけど、今はこれってどう考えられているのだろう。あんまり流行らずに、ひっそり流されたのかなぁ。こういう考え方で結構楽に生きられるようになる人も多いと思うから、もうちょい浸透してもいいと思うんだけど。
1つの自己とか、本当の自分とか、真実はいつもひとつとか、そういうのしんどいで。まぁええじゃないか主義でいきたい。あと、熱で苦しんでるときに『ドーン』はちと重い。
m(_ _)m
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