meta.kimura

感情の率直と、思索の明澄と、語と文との簡潔とです。

『生活者の平成30年史』博報堂生活総合研究所

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 生活総研は昔から好きで、たまにWebサイトを眺めている。データがたくさんあって、グラフがキレイで、ちょっといいことっぽいことが書いてある、あの感じ。特にそのデータを使ったことも、使えそうなグラフを見つけたこともないのだけれど、つまりはとっても浅いユーザーなのだけれど、なんかいいな、こういうの好きだな、というテイストで、仕事のサボり時間なんかにちらっと見ている。この本も、そんなサボり中に見つけたものだ。

●◯。。。...

 平成は30年間続いた。それって昭和の半分で、例えば1960年から1990年までと同じ期間だ。昭和の末に生まれてものごころついたときには平成だったぼくからすると、平成初期って、意外と、手を伸ばせば届きそうな距離にある。でも、30年。さっき挙げた例で考えたら、高度経済成長の始まりからバブル経済までが30年間でおさまってしまう。それだけの時間が、平成にも流れていたということで、要は、思ったより長い時代だったってことだ。
 時代が変われば、ライフスタイルは変わる。人の意識も、考え方も、変わる。その変化が、何となく説得力の高いデータと、納得できるラインでフラットな文章で紹介されている。ピックアップの仕方、見せ方は流石に広告代理店、博報堂。ツボを心得た整理と構成はほんとに見事だと思う。
 ただ、気をつけておきたいのは、その多くがあくまでマーケティングの範疇で行われていることだ。学術的な、正確性を求めて実施された調査というには、ちょっと無理がある。調査地域も都市部に、というか首都圏や大阪とかに限られているものもある。そこは差し引きして考えないといけない。それでも十分に、おもしろい結果が並んでいる。

●◯。。。...

 さらっと読める。とりあえずひと通り読んでみて、やっぱりな、と思った。やっぱり、ぼくは2010年以降の歴史が追えていないのだ。一番最近の流れが、一番自分から遠くにあるように思えた。
 1990年代から2000年代にかけて6割前後を保っていた「日本の政治・経済に関心がある」人たち。これが2010年以降減少傾向となり、2018年には5割を下回った。1992年の調査開始以来初めてのことだったらしい。「何か社会のために役立つことをしたい」人たちも2014年以降減少傾向となっていて、こちらも2018年に過去最低を記録している。ソーシャルビジネスが流行った時期、2010年前後にNPOに所属していた身からすると、ちょっと信じられないというか、肩を落としたくなるような数字だった。
 当たり前だけど、子どもの行動も変わっている。忙しいと言われているイマドキの子どもに忙しいという自覚はなく、ネットでつなげばいつだって友達とゲームができる。誰かの家に集まる必要もないし、門限を過ぎたって友達との時間は続けられる。隔世の感ってのは、このことかもしれない。ITリテラシー高い方だと思ってたのに、びっくりしてしまった。やられたなぁ。

●◯。。。...

 データは実感とズレる。そこからが始まりである。データが実感通りだったら、調査する意味はない。ズレたところで、思い直し、自分の目線を調節する。なんでかなと考えてみたりもする。そういうトレーニングにもなるし、まぁ、何より楽しいので、気になる人は読んでみるといいと思う。

 

m(_ _)m

 

 

生活者の平成30年史 データでよむ価値観の変化

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