meta.kimura

感情の率直と、思索の明澄と、語と文との簡潔とです。

『AIに負けない子どもを育てる』。できれば大人も育ちたい。

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 『AI v.s. 教科書が読めない子どもたち』の続編、と言っていいだろうか。まぁ、続編である。前作が大きな話題になった。教科書が読めない子どもたちが、意外と多い。というか、大人も含めて、文章が読めない人がたくさんいる。そんな問題提起をした本で、ぼくの周りでもちょいちょいと話題にのぼった。
 その続編っぽいのが出たぞってなことで、前々から気にはなっていたのだけれど、なんとなーく買う機会がなかった。結局、ふらっと大学図書館に行ってみたときに、そういえばと思い出して借りてみたのである。なんとなく、前作のときほど盛り上がっていない雰囲気は感じていた。読んでみたら、ちょっと納得した。おもしろかったけど、広く行き渡る感触の内容ではなかった。

●◯。。。...

 提示されている問題自体は『AI v.s. 教科書が読めない子どもたち』と同じものである。文章が読めない、あるいは、図表から意味を汲み取れない人が、思った以上に多い。その問題をあぶり出すために開発したリーディングスキルテストの有用性が強調される。
 最初の本が話題になっただけに、きっといろんな批判を浴びたんだろう。ちょっとくどいぐらいに「科学的に証明されているんだぞ」「すごいんだぞ」というメッセージが繰り返されているように感じた。
 そういうところも含みで、クセがある。えぐ味がある。ちょっと毒舌な感じというか、歯に衣を着せない語り口が敵をつくるかもしれない。そのクセとは距離を置いて眺めてみるべきだろう。どうやってリーディングスキルを計測しているのか、リーディングスキルの低さが何に影響するのか、などなど。前作以降蓄積されたデータを活用して、踏み込んだ形で分析されている。それなりに読みごたえがあった。
 リーディングスキルテストの体験版もついているので、自分の力試しもできる。さらりと全問正答、だったらよかったけれど、そうはさせてもらえず、少し頭を抱えてしまった。もうちょいできたハズ、と自分では思いたいが、それが実力ということか。

●◯。。。...

 なんとなく、このリーディングスキルの問題は、社会的にも大きいことなんじゃないだろうかと思っている。この本でもその傾向を感じるけれども、教育の話になると、どうしても床屋談義的になってしまって、個人的な経験や主観であれやこれや、こうすべきああすべき、という対処の話がごたっと混ざってしまう。それはある面では仕方がないことなのかもしれないけれど、一方で、問題は問題として、きちんと認識しなければならない。
 ぼくたちは読めていない。
 社会には思った以上に読めない人がいる。そして、読む能力がある人は、学習効率が高く、高学歴になる傾向にある。いや、正確にいえば、高学歴な道を選ぶこともできる、だろうか。そもそも能力値によって選択の幅が狭まっているのである。
 きっとそうだろう、と思う。そして、なんというか、たぶん、この能力って、読む書くに収まらない何かなのだという気がしてならない。話が通じる人と通じない人がいるような、理解の元になっている、根っこの方にある仕組みに近いような気もしているのだ。
 後半の方には、どうやってリーディングスキルを高めるのか、そのヒントにも触れられている。まだまだ問題が提示された段階で、その原理にまでは届いていなさそうな雰囲気だけれど、それでも対処は必要だろう。
 なるべく多くの人に、この問題に気づいてもらい、足掻いてもらいたいなぁ、と思った。自分のことは棚に上げて(スマホ読み、やめんとなぁ)。

 

m(_ _)m